東京大学など4機関が常温で水素を取り出す新触媒を開発、環状アルカンから最大3分子の水素抽出に成功

東京大学など4機関が常温で水素を取り出す新触媒を開発、環状アルカンから最大3分子の水素抽出に成功

東京大学など4機関が常温で水素を取り出す新触媒を開発、環状アルカンから最大3分子の水素抽出に成功

PR TIMES より

記事の要約

  • 共同研究チームが常温で水素を取り出す触媒を開発
  • 四種類の触媒を組み合わせたシステムを構築
  • 環状アルカンから最大3分子の水素を取り出すことに成功

環状アルカンから水素を取り出す新触媒の開発

東京大学、岡山大学、神戸大学、科学技術振興機構の共同研究グループは2025年1月9日、常温で環状アルカンから水素を取り出す新しい触媒システムを公開した。四種類の触媒を組み合わせることで、光エネルギーを利用して常温での水素取り出しを実現し、環状アルカン1分子から最大3分子の水素を取り出すことに成功している。

従来の水素取り出し技術では300度近い高温や紫外光照射が必要であったが、新システムでは可視光エネルギーで反応を進行させることが可能になった。この技術革新により、液体状の有機分子を水素貯蔵体として活用する道が開け、エネルギー効率の向上が期待できる。

本研究は科研費「学術変革研究A グリーン触媒科学」をはじめとする複数の研究助成を受けて実施された。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載され、化石燃料に依存しない持続可能な水素社会の実現に向けた重要な一歩となっている。

触媒システムの概要

項目 詳細
主要機関 東京大学、岡山大学、神戸大学、科学技術振興機構
使用触媒 光触媒、塩化テトラブチルアンモニウム、チオリン酸、コバルト触媒
技術的特徴 常温での反応、可視光エネルギーの利用
成果 環状アルカン1分子から最大3分子の水素取り出し
論文掲載 Nature Communications

触媒について

触媒とは、化学反応の速度を変化させる物質のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。

  • 反応速度を加速または減速させる機能を持つ
  • 反応前後で触媒自体は消費されない
  • 少量で大量の物質を変換できる

本研究で開発された触媒システムは、光触媒、塩化テトラブチルアンモニウム触媒、チオリン酸触媒、コバルト触媒の四種類を組み合わせることで高い効率を実現している。これにより、従来必要とされた高温条件や紫外光照射を不要とし、常温での水素取り出しを可能にした。

環状アルカンからの水素取り出しに関する考察

新しい触媒システムによる水素取り出し技術は、既存のガソリンスタンドなどのインフラを活用できる点で実用化への期待が高まる。液体状の有機分子を水素貯蔵体として利用できることで、水素の輸送や貯蔵における課題を解決できる可能性を秘めている。

今後の課題として、触媒システムの長期安定性や大規模生産時のコスト面での検討が必要になるだろう。また、触媒の製造過程における環境負荷の低減や、より効率的な水素取り出し方法の開発も求められる。

水素社会の実現に向けては、この技術を基盤として、さらなる研究開発や実証実験を重ねることが重要だ。特に、産業界との連携を強化し、実用化に向けた課題を一つずつ克服していく必要がある。

参考サイト/関連サイト

  1. PR TIMES.「ついにできた!常温・可視光でアルカンから水素を取り出す触媒を開発〔東京大学, 岡山大学, 神戸大学, 科学技術振興機構〕 | 国立大学法人岡山大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002844.000072793.html, (参照 2025-01-13).

新着ニュース一覧

⇒ 2025年3月のニュース一覧