順天堂大学と岡山大学が精神的ストレスによる皮膚アレルギー悪化のメカニズムを解明、新規治療法開発に期待
記事の要約
- 順天堂大学と岡山大学が共同でストレスとアレルギーの関係を解明
- 精神的ストレスが皮膚アレルギーを悪化させるメカニズムを特定
- 抗炎症性マクロファージの機能低下が炎症を促進することを発見
精神的ストレスによる皮膚アレルギー悪化メカニズムの解明
順天堂大学と岡山大学の共同研究グループは、2024年12月23日に精神的ストレスが皮膚アレルギーを悪化させるメカニズムを解明したことを発表した。研究グループは交感神経由来のストレスホルモンが抗炎症性マクロファージのβ2アドレナリン受容体を介して抗炎症機能を低下させることを突き止めている。
研究グループはマウスを用いた実験で、精神的ストレスを負荷させた場合にアレルギー性皮膚炎の症状が悪化することを確認している。実験では皮膚の腫れや炎症組織に浸潤する好酸球の数が増加することが明らかになり、ストレスが免疫反応に大きな影響を及ぼすことが示されている。
本研究成果はJournal of Allergy and Clinical Immunology誌のオンライン版に2024年11月18日付で発表されており、ストレス性の皮膚アレルギー炎症に対する新規治療法開発への道を開くものとなっている。研究はJSPS科研費や順天堂大学環境医学研究所プロジェクト研究助成などの支援を受けて実施されたものだ。
研究成果の詳細
項目 | 詳細 |
---|---|
研究発表日 | 2024年12月23日 |
研究機関 | 順天堂大学、岡山大学 |
研究内容 | 精神的ストレスによる皮膚アレルギー悪化メカニズムの解明 |
発表媒体 | Journal of Allergy and Clinical Immunology誌 |
研究支援 | JSPS科研費、順天堂大学環境医学研究所プロジェクト研究助成 |
β2アドレナリン受容体について
β2アドレナリン受容体とは、細胞膜上に存在する受容体タンパク質の一種で、ストレスホルモンの受容に関与する重要な分子である。以下のような特徴を持つ重要な生体分子だ。
- 交感神経系のストレス応答に関与
- 免疫細胞の機能調節に重要な役割
- 炎症反応の制御に関与する分子
本研究では抗炎症性マクロファージに発現するβ2アドレナリン受容体がストレスによって活性化されることで、死細胞除去などの抗炎症機能が低下することが明らかになっている。この発見はストレスと免疫システムの関係を理解する上で重要な知見となっている。
精神的ストレスと皮膚アレルギーの関係に関する考察
本研究で解明された精神的ストレスと皮膚アレルギーの関係性は、現代社会における重要な健康課題に光を当てるものとなっている。特にストレス社会と呼ばれる現代において、免疫細胞の機能がストレスによって影響を受けることが明確に示されたことは、予防医学的な観点からも大きな意義を持つものだ。
今後の課題として、この研究成果を実際の治療法開発にどのように結びつけていくかという点が挙げられる。β2アドレナリン受容体を標的とした新規治療薬の開発には、さらなる研究と臨床試験が必要となるだろう。ストレス関連の皮膚疾患に悩む患者に対する新たな治療選択肢の提供が期待される。
将来的には、ストレスによる免疫機能への影響をより詳細に理解することで、予防医学的なアプローチも可能になると考えられる。精神的ストレスのマネジメントと皮膚アレルギーの治療を組み合わせた統合的なアプローチの確立が望まれるところだ。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【岡山大学】精神的ストレスがアトピー性皮膚炎を悪化させるメカニズムを解明-ストレスは免疫細胞を狂わせる!- | 国立大学法人岡山大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002794.000072793.html, (参照 2025-01-08).