岡山大学がイネのケイ素吸収制御タンパク質SSSを発見、ストレス耐性作物の開発に期待高まる
記事の要約
- 岡山大学がイネのケイ素吸収制御メカニズムを解明
- SSSタンパク質による長距離シグナル制御を発見
- ストレスに強い作物開発への応用に期待
イネのケイ素吸収を制御するSSSタンパク質の発見
岡山大学の高等先鋭研究院資源植物科学研究所の山地直樹准教授と三谷奈見季准教授らの研究グループは、イネのケイ素吸収と蓄積を制御するシグナルタンパク質SSSを2024年12月27日に発表した。DIYインセクトレーザー法の開発によって篩管液中のタンパク質検出が可能となり、SSSタンパク質の存在を確認することに成功している。
イネのケイ素吸収制御メカニズムは長年の研究課題であったが、今回の研究によって茎葉から根に運ばれるSSSタンパク質がフィードバック制御を行っていることが判明した。ケイ素はイネにとって必須元素ではないものの、ストレス耐性を向上させる重要な元素であることが明らかになっている。
今回の研究成果は英国の学術誌Nature Communicationsに掲載され、ケイ素施肥の最適化や新品種開発への道が開かれた。研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業や武田科学振興財団の支援を受けて実施されており、持続可能な農業生産への貢献が期待されている。
研究成果のまとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
発見内容 | イネのケイ素吸収を制御するSSSタンパク質 |
研究機関 | 岡山大学高等先鋭研究院資源植物科学研究所 |
主要研究者 | 山地直樹准教授、三谷奈見季准教授 |
掲載誌 | Nature Communications(2024年12月27日) |
研究支援 | 日本学術振興会、武田科学振興財団、大原奨農会 |
シグナルタンパク質SSSについて
シグナルタンパク質SSSは、イネの茎葉から根への長距離シグナル伝達を担う重要な因子である。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 篩管を通して茎葉から根へと運ばれる
- 花成ホルモン(フロリゲン)から機能分化した
- ケイ素の吸収と蓄積をフィードバック制御する
SSSはイネ科植物が高度にケイ素を利用するために進化した特殊なタンパク質であることが判明した。DIYインセクトレーザー法の開発により、篩管液中のSSSタンパク質を検出することが可能となり、イネのケイ素吸収メカニズムの解明に大きく貢献することが期待されている。
SSSタンパク質の発見に関する考察
SSSタンパク質の発見は、植物の栄養吸収メカニズムの理解に新たな視点をもたらす画期的な成果である。イネ科植物における花成ホルモンからの機能分化という事実は、生物の進化過程における遺伝子の新機能獲得の好例として注目に値するだろう。
今後はSSSタンパク質の制御メカニズムをより詳細に解明することで、効率的なケイ素施肥技術の開発が期待される。環境ストレスへの耐性向上は持続可能な農業生産において重要な課題であり、SSSタンパク質の研究成果は新品種開発の基盤となる可能性が高い。
研究成果の応用においては、イネ以外のイネ科作物への展開も視野に入れる必要がある。DIYインセクトレーザー法の開発は、他の植物種における類似のシグナルタンパク質の探索を可能にし、作物改良の新たな展開が期待できるだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【岡山大学】イネのケイ素吸収を制御する長距離シグナルタンパク質を発見!ケイ素蓄積を増やし、ストレスに強い作物に期待 | 国立大学法人岡山大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002811.000072793.html, (参照 2025-01-08).