慶應義塾大学が循環器外来診療向けePROシステムを開発、医師と患者のコミュニケーション改善に貢献

記事の要約
- 循環器外来診療向けePROシステムを共同開発
- 患者報告アウトカムを電子的に収集・評価可能に
- 医師と患者のコミュニケーション改善を実証
慶應義塾大学のePROシステム開発
慶應義塾大学医学部の研究チームは、中部電力株式会社と共同で循環器外来診療における患者報告アウトカム収集システム(ePRO)を2025年1月16日に発表した。このシステムは心不全、心房細動、狭心症の三疾患を対象とし、患者がスマートタブレットを用いて症状や生活のしやすさ、治療への不安や満足度などを定量的に評価・収集できる機能を実装している。
慶應義塾大学医学部のチームはePROシステムの効果検証をランダム化試験によって実施し、医師と患者間のコミュニケーション改善効果を明確に示すことに成功した。医師の治療説明の質が向上し、患者の病気理解度が高まることが実証されたのである。
本研究成果は2024年1月14日付でJAMA Network Open電子版に掲載され、AIホスピタル事業の一環として実施された開発プロジェクトの重要な成果となっている。このシステムによって患者が症状や治療への不安・満足度を医師と正確に共有できる基盤が整備されたことで、患者のニーズに沿った医療提供体制の確立に大きく前進した。
ePROシステムの概要
項目 | 詳細 |
---|---|
開発主体 | 慶應義塾大学医学部研究チーム、中部電力株式会社 |
対象疾患 | 心不全、心房細動、狭心症 |
主な機能 | 症状、生活のしやすさ、治療への不安・満足度の定量的評価・収集 |
使用デバイス | スマートタブレット |
研究成果発表 | JAMA Network Open電子版(2024年1月14日) |
電子的患者報告アウトカムについて
電子的患者報告アウトカム(ePRO)とは、患者自身が自分の健康状態や治療効果を電子的に報告・記録するシステムのことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 患者の主観的な症状や生活の質を定量的に評価可能
- リアルタイムでのデータ収集と分析が実現
- 医療従事者との情報共有が効率化
電子的患者報告アウトカムシステムは循環器外来診療において、心不全や心房細動、狭心症などの慢性疾患管理に特に有用性が高い。患者の日常的な症状変化や治療への反応を継続的にモニタリングすることで、より適切な医療介入のタイミングを判断することが可能になるのだ。
循環器外来診療のePROシステムに関する考察
循環器外来診療におけるePROシステムの導入は、医療の質向上において画期的な前進となる可能性が高い。患者と医師のコミュニケーションが改善されることで、治療方針の決定や症状管理がより効果的になることが期待できるのである。
一方で、高齢者や技術に不慣れな患者層に対する使用支援体制の整備が今後の課題となるだろう。システムの使いやすさや直感的な操作性の向上に加え、必要に応じて対面でのサポート体制を構築することが、普及促進の鍵を握ることになるはずだ。
さらに、収集されたデータの解析や活用方法の確立も重要な検討事項となる。AIやビッグデータ解析技術との連携により、より高度な診断支援や予防医療への展開が可能になることが見込まれるのである。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【慶應義塾】循環器外来診療における患者報告アウトカム収集システムの開発 | 慶應義塾のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000273.000113691.html, (参照 2025-01-16).