慶應義塾大学が新規抗体精製法を開発、プロテインA代替技術による製造コスト削減に期待
記事の要約
- 慶應義塾大学が新規抗体精製法を開発
- ペプチド模倣高分子による低コストな精製手法を確立
- 安定性と回収率の高さを実証した研究成果
ペプチド模倣高分子による新規抗体精製法の開発成果
慶應義塾大学の研究グループは、プロテインAの抗体結合領域を模倣した合成高分子を用いた新しい抗体精製法の研究成果を2024年11月26日に発表した。研究グループは高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の表面に合成高分子を修飾し、pH依存的な抗体医薬品の保持・溶出挙動を評価することで、プロテインAを修飾したカラム充填剤と同様の機能を持つことを確認している。
研究グループは穏やかな溶出条件下でハイブリドーマ細胞培養上清から80%を超える回収率で抗体を精製することに成功した。既存のプロテインAカラムが抱える低い安定性や高コストといった課題に対し、合成高分子を用いることで安価で安定性の高い精製手法を実現することが可能となっている。
研究グループは100回連続の精製や半年間の使用後も再現性の高い回収率を維持できることを確認しており、再利用性や耐久性の高さも実証された。今後は抗体医薬品の製造コストの削減に向けて、市場規模の拡大を続ける抗体医薬品分野での実用化が期待されている。
新規抗体精製法の特徴まとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
開発機関 | 慶應義塾大学大学院理工学研究科、理工学部、薬学部 |
研究内容 | プロテインAの抗体結合領域を模倣した合成高分子による精製法 |
主な成果 | 80%超の抗体回収率、100回連続精製での安定性確認 |
発表日 | 2024年11月26日 |
掲載誌 | ACS Applied Materials & Interfaces |
プロテインAについて
プロテインAとは、抗体医薬品の精製に広く使用されているタンパク質で、抗体との特異的な結合能力を持つ物質である。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 抗体との高い結合特異性を持つ
- pH依存的な結合・解離制御が可能
- 抗体医薬品の製造工程で重要な役割を果たす
現在の抗体医薬品製造において、プロテインAを用いた精製工程は総製造コストの約6割を占める重要な工程となっている。しかし従来のプロテインAカラムは安定性が低く高コストであるため、新たな代替技術の開発が求められており、合成高分子による模倣技術は有望な解決策となっている。
ペプチド模倣高分子による抗体精製法に関する考察
本研究で開発された合成高分子による抗体精製法は、従来のプロテインAカラムが抱える課題を解決する画期的な手法として評価できる。特に80%を超える高い回収率と100回以上の連続使用における安定性は、実用化に向けた大きな利点となるだろう。
今後の課題として、より大規模な製造プロセスへのスケールアップや、異なる種類の抗体に対する汎用性の検証が必要となるだろう。また、製造コストのさらなる削減に向けて、合成高分子の製造方法の最適化や、より効率的な精製条件の探索も重要な研究課題となる。
医薬品製造の効率化という観点から、本技術の実用化は抗体医薬品の製造コストを大幅に削減する可能性を秘めている。今後は製薬企業との連携を通じて実用化に向けた検証を進め、より安価で高品質な抗体医薬品の供給体制の確立につながることが期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【慶應義塾】ペプチド模倣高分子による新規抗体精製法の開発 | 慶應義塾のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000281.000113691.html, (参照 2025-01-24).