慶應義塾大学がコロナ禍の新たな格差研究を発表、所得格差に連動したウェルビーイング格差の拡大が明らかに

記事の要約
- 慶應義塾大学が日本の所得格差と生活満足度の研究結果を発表
- コロナ禍でウェルビーイング格差が所得格差と連動して拡大
- 高所得層の在宅勤務普及により非金銭的側面での格差が定着
慶應義塾大学による所得格差とウェルビーイング格差の研究成果
慶應義塾大学は2025年1月20日、山本勲教授と石井加代子特任准教授による全国の家計パネルデータの解析結果を発表した。コロナ禍を通じて日本の所得格差は拡大しなかったものの、生活満足度や心身の健康状態などで測定したウェルビーイング格差が所得格差に連動した形で拡大していたことが明らかになっている。
研究グループは科学研究費補助金・特別推進研究プロジェクトの一環として、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所パネルデータ設計・解析センターの日本家計パネル調査データを活用した分析を実施している。研究成果は2024年12月21日にSocial Indicators Researchのオンライン版で掲載され、家計データの国際比較が可能となったのだ。
給付金支給などにより金銭的な格差は抑制されたが、高所得層では在宅勤務の普及によりその利点を享受する結果となった。この状況を踏まえ、所得だけでなくウェルビーイングなど非金銭的側面も含めた格差問題への政策的対応が必要であることを提言している。
家計パネル調査の分析結果概要
所得格差 | ウェルビーイング格差 | |
---|---|---|
研究期間 | 2022〜26年度 | 2022〜26年度 |
研究主体 | 慶應義塾大学研究グループ | 慶應義塾大学研究グループ |
分析データ | 日本家計パネル調査(JHPS) | 日本家計パネル調査(JHPS) |
研究成果 | 格差拡大は見られず | 所得層による格差拡大 |
ウェルビーイングについて
ウェルビーイングとは、人々の生活の質や幸福度を包括的に表す概念であり、主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- 心身の健康状態や生活満足度を含む総合的な指標
- 経済的要因だけでなく非金銭的側面も評価
- 個人や社会の持続可能な発展を測る尺度
本研究ではウェルビーイング指標を用いて、コロナ禍における社会格差の実態を分析している。特に在宅勤務の普及による高所得層と低所得層の間での生活満足度や健康状態の差が浮き彫りとなり、金銭面以外での格差拡大が明らかになった。
所得格差とウェルビーイング格差の関係性に関する考察
慶應義塾大学の研究により明らかになった所得格差とウェルビーイング格差の関係性は、現代社会における格差問題の複雑さを示している。給付金による所得補填だけでは解決できない非金銭的な格差が存在し、特に在宅勤務の普及によって高所得層が享受できる生活の質の向上が格差を広げる要因となっているのだ。
今後の課題として、テレワークなどの働き方改革が一部の所得層にのみ恩恵をもたらす状況を改善する必要がある。職種や雇用形態に関係なく、すべての労働者が柔軟な働き方を選択できる環境整備が求められており、政策的な対応が不可欠だろう。
将来的には、所得再分配政策に加えて、労働環境や生活の質に関する格差是正策も重要となってくる。ウェルビーイング格差の解消には、教育機会の均等化や職業訓練の充実など、包括的なアプローチが必要である。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【慶應義塾】コロナ禍がもたらした新たな格差の実態 | 慶應義塾のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000278.000113691.html, (参照 2025-01-20).