名桜大学とヘルスケアテクノロジーズ、歩行データを活用したAI認知症評価システムの共同研究を開始、早期発見と予防に期待

記事の要約
- 名桜大学とヘルスケアテクノロジーズがAIを活用した認知症評価システムの共同研究を開始
- 歩行データを活用し日常生活での認知機能評価を目指す
- 2025年から8年かけて11の疾患の発症予兆モデルを開発予定
名桜大学とヘルスケアテクノロジーズの認知症早期発見に向けた取り組み
公立大学法人名桜大学とヘルスケアテクノロジーズ株式会社は2025年3月4日、AI技術を活用した新たな認知機能評価システムの開発に向けた共同研究契約を締結した。両社はヘルスケアアプリ「HELPO」を通じて取得する歩行データを活用し、身体的・心理的負担を軽減しながら日常生活の中で認知機能評価を可能にするAI技術の開発を目指している。
日本では2025年に認知症高齢者数が約472万人、2060年には645万人弱に達すると予測されており、医療・介護費は年間11.2兆円に上る状況となっている。軽度認知障害を抱えた高齢者のうち年間10~30%が認知症に進行することが明らかになっており、早期発見と適切な介入が重要な課題となっているのだ。
名桜大学は「やんばる版プロジェクト健診」において、沖縄県在住の対象者から歩行データを取得し、ミニメンタルステート検査の評価を組み合わせることで、認知機能評価が可能なAIモデルを開発する方針を示した。このプロジェクトを通じて認知症の早期発見と予防を実現し、患者とその家族の負担軽減や医療費の適正化に貢献することを目指している。
認知症早期発見システムの開発概要
項目 | 詳細 |
---|---|
研究主体 | 名桜大学、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社 |
開発目標 | AI技術を活用した新たな認知機能評価システム |
活用データ | HELPOアプリを通じた歩行データ、MMSEの評価結果 |
対象地域 | 沖縄県(やんばる版プロジェクト健診対象地域) |
開発期間 | 2025年度から8年間 |
ミニメンタルステート検査について
ミニメンタルステート検査(MMSE)とは、認知機能を評価するための世界的に標準化された検査方法のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 時間や場所の見当識、記憶力、計算力などを総合的に評価
- 30点満点のスコアリングシステムで客観的な評価が可能
- 短時間で実施可能な認知機能スクリーニング検査
認知症の早期発見において重要な役割を果たすMMSEだが、現状では医療機関での実施が必要となり、受診者の負担が大きいという課題がある。歩行データとMMSEの相関関係を分析することで、日常生活の中で簡便に認知機能を評価できる新たな手法の確立が期待されている。
AIを活用した認知症評価システムに関する考察
歩行データを活用した認知機能評価システムは、従来の検査方法における身体的・心理的負担を大幅に軽減できる可能性を秘めている。特に高齢者にとって通院による負担が大きい現状を考えると、日常生活の中で自然に認知機能を評価できる仕組みは画期的な解決策となり得るだろう。
今後の課題として、AIモデルの精度向上と個人情報保護の両立が挙げられる。歩行データからどの程度正確に認知機能を評価できるか、また収集したデータの安全な管理と活用方法について、慎重な検討が必要となるだろう。システムの実用化に向けては、プライバシーに配慮しながら十分な検証期間を設けることが重要である。
将来的には、本研究で開発されるAIモデルを他の疾患の予防や早期発見にも応用できる可能性がある。医療費の適正化や健康寿命の延伸という社会課題の解決に向けて、このような革新的な取り組みがより一層進展することを期待したい。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「公立大学法人名桜大学とヘルスケアテクノロジーズ株式会社、認知症の早期発見・予防に関する共同研究を開始 | ヘルスケアテクノロジーズ株式会社のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000054466.html, (参照 2025-03-05).