名桜大学とヘルスケアテクノロジーズが認知症早期発見AIの共同研究を開始、スマートフォンの歩行データを活用した新システム開発へ

記事の要約
- 名桜大学とヘルスケアテクノロジーズが認知症早期発見のAI開発で提携
- スマートフォンの歩行データを活用した新たな認知機能評価システムを開発
- やんばる版プロジェクト健診での歩行データとMMSEを組み合わせてAIモデルを構築
名桜大学とヘルスケアテクノロジーズのAI技術活用による認知症早期発見への取り組み
公立大学法人名桜大学とヘルスケアテクノロジーズ株式会社は2025年3月4日、AI技術を活用した新たな認知機能評価システムの開発に向けた共同研究契約を締結した。この共同研究では、ヘルスケアアプリ「HELPO」を通じて取得する歩行データを活用し、日常生活に溶け込んだ形で認知機能を評価できる新たなAI技術の開発を目指している。
我が国の認知症高齢者数は2025年には約472万人、2060年には645万人弱に達すると予測されており、医療・介護費は年間11.2兆円、インフォーマルケアの費用は年間380万円に及ぶことが報告されている。現在の認知症スクリーニング検査は身体的・心理的負担が大きく、認知障害の評価が困難な状況となっているのだ。
名桜大学が実施している「やんばる版プロジェクト健診」において、沖縄県在住の対象者からの歩行データを取得し、ミニメンタルステート検査(MMSE)の評価と組み合わせることで、新たなAIモデルを共同開発する。認知症の早期発見と予防を可能にし、患者と家族の負担軽減や医療費の適正化に貢献することを目指すだろう。
名桜大学とヘルスケアテクノロジーズの共同研究概要
項目 | 詳細 |
---|---|
締結日 | 2025年3月4日 |
研究目的 | 認知症の早期発見・予防に向けたAI技術開発 |
活用技術 | HELPOアプリによる歩行データ収集、MMSEによる評価 |
対象地域 | 沖縄県(やんばる版プロジェクト健診対象地域) |
期待効果 | 認知症の早期発見・予防、医療費適正化、患者・家族の負担軽減 |
MMSEについて
MMSEとはミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination)の略称で、認知機能を評価するための世界的に標準化された検査手法である。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 記憶力、見当識、計算力、言語機能などを総合的に評価
- 30点満点のスコアリングシステムで認知機能を数値化
- 短時間で実施可能な簡便なスクリーニング検査
MMSEは認知症の早期発見において重要な役割を果たしており、本共同研究では歩行データとMMSEの評価を組み合わせることで、より精度の高い認知機能評価システムの開発を目指している。新たなAIモデルによって、従来の検査方法における身体的・心理的負担を軽減しつつ、効果的な認知症スクリーニングが可能になるだろう。
認知症早期発見AI開発に関する考察
歩行データとMMSEを組み合わせたAI技術の開発は、認知症スクリーニングの新たな可能性を切り開く革新的なアプローチである。従来の検査方法では通院や複数の検査が必要であったが、スマートフォンを通じた日常的なデータ収集により、患者の負担を大幅に軽減しながら継続的なモニタリングが可能になるだろう。
一方で、個人情報保護やデータセキュリティの確保が重要な課題となることが予想される。歩行データの収集や分析には、プライバシーへの配慮と厳格なデータ管理体制の構築が不可欠だ。また、AIモデルの精度向上や false positive/negative の低減に向けた継続的な改善も必要となるだろう。
本研究は認知症の早期発見・予防だけでなく、医療費の適正化や介護負担の軽減にも大きく貢献する可能性を秘めている。今後は他の疾患への応用や、より広範な地域でのデータ収集を通じて、AIモデルの汎用性と信頼性を高めていくことが期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「公立大学法人名桜大学とヘルスケアテクノロジーズ株式会社、 認知症の早期発見・予防に関する共同研究を開始 | 公立大学法人 名桜大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000129647.html, (参照 2025-03-05).