岡山大学が食道がん患者の栄養状態と歯科的要因の相関関係を解明、早期専門家チーム介入の重要性を確認

記事の要約
- 岡山大学が食道がん患者の抗がん剤治療中の栄養状態を調査
- 奥歯のかみ合わせが多い患者の方が栄養状態が悪化
- 早期からの専門家チーム介入の重要性が判明
食道がん患者の抗がん剤治療における栄養状態と歯科的要因の関連性
岡山大学病院歯科・予防歯科部門の山中玲子助教らの研究グループは、2025年3月4日に食道がん手術前の抗がん剤治療中における栄養状態と歯科的要因の関連性について新たな知見を発表した。研究グループは予後推定栄養指数(PNI)と歯科的な因子との関連を分析し、奥歯のかみ合わせの数が多い患者において栄養状態が大きく悪化することを確認している。
この研究では、予想に反して奥歯のかみ合わせの数が少ない患者の方が栄養状態を維持できていることが判明した。その要因として、奥歯のかみ合わせの数が少ない患者は全身状態が悪かったために、歯科や栄養の専門家チームが早期から介入していたことが明らかになっている。
研究成果は2025年12月19日にスイスの栄養関連科学雑誌「Nutrients」のResearch Articleとして掲載された。この発見により、口腔内や全身の状態に関わらず、全ての患者に対して術前の抗がん剤治療前からの専門家チームによる早期介入の重要性が示唆されている。
食道がん治療における栄養管理の重要ポイント
項目 | 詳細 |
---|---|
研究発表機関 | 岡山大学病院歯科・予防歯科部門 |
主な発見 | 奥歯のかみ合わせ数が多い患者の栄養状態悪化 |
介入効果 | 早期専門家チーム介入による栄養状態維持 |
掲載誌 | Nutrients(栄養関連科学雑誌) |
発表日 | 2025年3月4日 |
予後推定栄養指数(PNI)について
予後推定栄養指数(PNI)とは、患者の栄養状態を評価するための指標であり、手術や治療の予後を予測する上で重要な役割を果たしている。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 血清アルブミン値と総リンパ球数から算出される客観的指標
- 手術や治療のリスク評価に活用
- 栄養状態の定量的評価が可能
食道がんの術前抗がん剤治療中においては、PNIの変動を継続的にモニタリングすることで栄養状態の変化を把握することが可能となる。PNIの低下は患者の予後に影響を及ぼす重要な因子であり、適切な栄養管理と専門家チームの介入タイミングを決定する指標として活用されている。
食道がん治療における栄養管理に関する考察
奥歯のかみ合わせ数と栄養状態の関係性が明らかになったことは、食道がん治療における栄養管理の新たな視点を提供している。従来の想定とは異なり、口腔内の状態が良好な患者においても栄養状態が悪化するリスクがあることが判明し、予防的な介入の重要性が示唆されることとなった。
今後の課題として、専門家チームの早期介入をより効果的に実施するための体制整備が挙げられる。特に、口腔内の状態が良好な患者に対しても、定期的な評価と適切な介入タイミングの判断が重要となっており、そのための具体的な基準やプロトコルの確立が求められている。
将来的には、AIやデジタル技術を活用した栄養状態のモニタリングシステムの開発も期待される。患者の口腔内状態や栄養状態をリアルタイムで評価し、必要な介入のタイミングを予測することで、より効果的な治療支援が実現できる可能性がある。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【岡山大学】かみ合っている奥歯の数が多い患者の方が抗がん剤治療中に栄養状態が悪化するのはなぜか? ~歯科や栄養を含む専門家チームの早期介入の有無が鍵~ | 国立大学法人岡山大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002951.000072793.html, (参照 2025-03-05).