記事の要約
- 5社がBNCTによる深部腫瘍治療の研究開発に関するMOUを締結
- 各社の専門技術と知識を共有し、がん治療の発展を目指す
- 従来の深さ制限を超えたBNCT治療の実現に向けた共同研究を開始
5社によるBNCT研究開発の覚書締結と深部腫瘍治療への展開
住友重機械工業は2024年12月25日、藤田医科大学、アトランセンファーマ、ステラファーマ、フジタとホウ素中性子捕捉療法による深部腫瘍治療の研究開発を推進するための覚書を締結した。この締結により、5社が持つ専門技術と知識を共有し、がん治療のさらなる発展に寄与することを目的としている。
従来のBNCTでは体表面から最大6~8cmの深さまでの腫瘍治療に制限があったが、5社の強みを活かすことでより深い部位での治療を目指す。各社が持つ技術と経験を組み合わせることで、BNCTの新たな可能性を追求していく形だ。
住友重機械工業はBNCT装置の開発と製造において豊富な経験を持ち、藤田医科大学は臨床研究の実績を有する。アトランセンファーマはBNCT用薬剤濃度維持技術、ステラファーマは医薬品開発の知見、フジタは低放射化コンクリートを用いた建屋建設の技術を提供する予定である。
5社の役割と特徴まとめ
住友重機械工業 | 藤田医科大学 | アトランセンファーマ | ステラファーマ | フジタ | |
---|---|---|---|---|---|
主な役割 | BNCT装置の開発・製造 | 臨床研究の実施 | 薬剤濃度維持技術の開発 | BNCT用薬剤の開発 | 建屋の建設 |
強み | 豊富な装置開発経験 | 高度な専門性 | 薬剤技術 | 医薬品開発知識 | 低放射化コンクリート技術 |
ホウ素中性子捕捉療法について
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)とは、がん細胞に選択的に取り込まれるホウ素薬剤を投与し、体外から中性子を照射することでがん細胞を破壊する放射線治療法のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- がん細胞に選択的に集まるホウ素薬剤を使用
- 核反応によりα粒子とLi反跳核を放出
- 正常細胞への影響を最小限に抑えた治療が可能
BNCTでは核物理反応により放出される荷電粒子の飛程が約9μmおよび約4μmと細胞1個分の大きさに相当するため、周囲の正常細胞への影響を最小限に抑えることが可能だ。ホウ素を取り込んだがん細胞を選択的に破壊できる治療法として期待が高まっている。
5社連携によるBNCT研究開発に関する考察
5社の連携によって各社の強みを活かした包括的な研究開発体制が構築されることは、BNCT治療の新たな展開において重要な一歩となる。特に住友重機械工業のBNCT装置開発経験と藤田医科大学の臨床研究実績を組み合わせることで、より実践的な治療法の確立が期待できるだろう。
今後の課題として、より深部の腫瘍への治療効果の検証や、治療時の安全性確保が挙げられる。アトランセンファーマとステラファーマの薬剤関連技術を活用し、深部腫瘍への効果的な薬剤送達システムの開発が重要になってくるだろう。
BNCTの適用範囲拡大には、装置性能の向上と薬剤開発の両面からのアプローチが不可欠だ。5社の連携により、これまで治療が困難だった深部腫瘍への新たな治療選択肢が提供されることが期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「藤田医科大学、アトランセンファーマ、ステラファーマおよびフジタとホウ素中性子捕捉療法に関する覚書を締結 | 住友重機械工業株式会社のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000074.000100192.html, (参照 2025-01-08).