記事の要約
- CellidがJSTの医療用ARグラス開発プロジェクトに参画
- 東京科学大学と三井化学と共同で素材開発から臨床検証まで実施
- 医療現場での実用化に向け独自の光学技術を活用
医療用ARグラスの開発プロジェクトへのCellidの参画
Cellid株式会社は東京科学大学工学院電気電子系の雨宮智宏准教授が率いる医療用ARグラス開発・研究プロジェクトに2024年12月20日に参画することを発表した。このプロジェクトは科学技術振興機構の2024年度戦略的創造研究推進事業に採択され、素材開発から臨床検証までを一貫して実施する体制が整えられている。
医療分野におけるARグラスの活用は遠隔での診断支援や手術シミュレーション、手術中の生体情報可視化などが期待されているものの、従来のARグラスは重量や大きさに課題があり医療現場での実用が難しかった。Cellidは独自の光学シミュレーション技術と生産技術を活かし、一般的なメガネレンズと同等の薄さと軽さを実現している。
東京科学大学大学院医歯学総合研究科の医師の協力のもと、初期プロトタイプのARグラスを使用した臨床現場での検証が実施される予定となっている。視野を中心にした表示方式や医療処置の遂行を妨げない表示方法の検討が行われ、医師からのフィードバックを受けて臨床での有効性と安全性が検証されることになった。
医療用ARグラス開発プロジェクトの概要
項目 | 詳細 |
---|---|
研究テーマ | メタマテリアル技術を活用した医療用ARグラスの実現 |
代表研究者 | 雨宮智宏(東京科学大学) |
分担研究者 | 白神賢(Cellid)、飯田健二(三井化学)、吉田宗一郎(東京科学大学) |
研究期間 | 2024年度~2029年度 |
研究費総額 | 299,000,000円 |
グラント番号 | JPMJCR24R1 |
メタマテリアルについて
メタマテリアルとは、自然界には存在しない光学特性を人工的に実現する新しい材料技術のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 波長よりも小さな周期構造で光を制御可能
- 従来の光学材料では実現できない特性を実現
- ARグラスの小型軽量化に貢献する革新的な技術
医療用ARグラスの開発において、メタマテリアル技術は光学性能と装着性の両立を可能にする重要な要素となっている。東京科学大学はメタマテリアルの研究で国内有数の知見と設備を有しており、この技術を活用することで医療現場に最適化された革新的なARグラスの実現を目指すことが可能になる。
医療用ARグラス開発プロジェクトに関する考察
産学連携による医療用ARグラスの開発は、医療現場のデジタル化を加速させる重要な取り組みとなっている。医療機器としての安全性と使用性を両立させるためには、臨床現場での実証実験と医師からのフィードバックが不可欠であり、今回のプロジェクトではその体制が整えられている。
一方で医療現場での普及に向けては、コストや耐久性、消毒・滅菌への対応など、様々な課題が存在している。これらの課題に対しては、メタマテリアル技術による材料革新と三井化学の素材開発力を組み合わせることで、解決策を見出すことが期待される。
将来的には遠隔医療支援や手術トレーニング、医療教育など、活用領域の拡大も見込まれている。5年間という長期的な研究開発期間を通じて、医療現場のニーズに応える革新的なARグラスの実現が期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「Cellid、東京科学大学、三井化学と合同で科学技術振興機構の医療用ARグラス開発・研究プロジェクトに参画 | Cellid株式会社のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000030718.html, (参照 2025-01-08).