記事の要約
- 大学キャリアセンターの支援は就活本番期に集中、低学年期からの支援を理想視
- 7割超の大学が新しい支援プログラムを実施、職員数の多さが原動力に
- 企業評価で重視する観点は「人柄や性格」「汎用的スキル」が上位
大学キャリアセンターの学生支援における実態と課題
株式会社ベネッセ i-キャリアが運営するシンクタンク組織「まなぶとはたらくをつなぐ研究所」は、2024年12月20日に大学キャリアセンターの学生支援に関する調査結果を公開した。調査では全国277校の大学から回答を得て、就活本番期となる3年生後期に97.8%、4年生前期に89.9%と支援が集中している実態が明らかになった。
キャリアセンターの職員数が20人以上の大学では9割以上が新たな支援プログラムを実施しており、職員数15人以上の大学では75%以上が学生を巻き込んだプログラム運営を展開している。学生のキャリア観醸成については、7割以上の大学が低学年期からの取り組み開始を理想としている一方で、実際に低学年期から開始している学生は全体の約1割にとどまることが判明した。
企業に学生を評価してもらいたい観点については、「人柄や性格」が92.8%で最多となり、「志望企業への熱意」が70.0%で続いている。さらに「汎用的スキル」が66.4%で3位にランクインし、「専門的スキル」の39.4%を大きく上回る結果となった。
大学キャリアセンターの支援状況まとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
支援比重が最も大きい時期 | 3年生後期(97.8%)、4年生前期(89.9%) |
理想とする開始時期 | 1年生(36.1%)、2年生(37.5%)、3年生(21.7%) |
新プログラム実施状況 | 全体の73.6%、職員20人以上の大学では90%超 |
学生参加型プログラム | 全体の52.7%、職員15人以上の大学では75%超 |
企業への評価期待項目 | 人柄や性格(92.8%)、熱意(70.0%)、汎用的スキル(66.4%) |
汎用的スキルについて
汎用的スキルとは、特定の職種や業界に限定されない、広く活用可能な基礎的な能力のことを指す。主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- コミュニケーション力や問題解決能力など、職種を超えて必要とされる力
- 学びや経験を通じて段階的に向上が可能な能力
- キャリア形成において重要な転用可能なスキル
大学キャリアセンターの調査では、企業からの評価観点として汎用的スキルが66.4%と高い割合を示している。専門的スキルの39.4%を大きく上回るこの結果は、変化の激しい現代社会において、柔軟に対応できる基礎的な能力の重要性が増していることを示唆している。
大学キャリア支援の早期化に関する考察
キャリアセンターが低学年期からの支援を理想としながらも実現できていない背景には、人的リソースの制約と学生の意識の問題が存在している。職員数の多い大学ほど新しい取り組みや学生参加型プログラムを実施できている現状からは、マンパワーの確保が早期支援実現の重要な要素となることが見えてくるだろう。
学生のキャリア意識を低学年期から醸成するためには、就職活動に直結しない形での動機付けが重要になってくる。インターンシップや業界研究といった従来型のアプローチだけでなく、授業やゼミ活動と連携した汎用的スキルの育成プログラムを展開することで、自然な形でのキャリア教育が実現できるはずだ。
大学キャリアセンターが企業評価において人柄や汎用的スキルを重視している点は、長期的な視点でのキャリア支援の必要性を示している。早期からの継続的な支援によって培われる基礎的な能力が、将来的な就職活動や職業生活における重要な土台となることが期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「大学キャリアセンターの学生キャリア支援における調査【大学調査】 学生がキャリア観醸成に関する取り組みを開始する時期について、「低学年期」を理想とする大学は7割超 | 株式会社ベネッセコーポレーションのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001321.000000120.html, (参照 2025-01-08).