岡山大学が高齢者878人の生涯学習効果を実証、加齢によるポジティブな意識変化が明らかに

記事の要約
- 岡山大学が高齢者の生涯学習効果に関する研究結果を公開
- 生涯学習で加齢に伴う獲得意識が向上することを実証
- 身体活動で加齢に伴う喪失意識が低下することを確認
岡山大学の高齢者研究による生涯学習効果の実証
岡山大学の研究グループは、70歳以上の日本人高齢者878人を対象とした12カ月間の縦断調査の研究成果を2024年12月26日に発表した。研究グループは岡山大学OU-SPRING生の白石奈津栄大学院生と岡山大学学術研究院社会文化科学学域の堀内孝教授に加え、大阪大学中川威准教授と兵庫教育大学大学院山本康裕大学院生が参画している。
研究では高齢者の加齢に係る変化意識に対する生涯学習と身体活動の影響を分析し、マルチレベル分析によって生涯学習の実施が加齢によるポジティブな変化意識を高く維持することを明らかにした。また身体活動の多い高齢者は加齢によるネガティブな変化意識が低く維持されることも判明している。
この研究成果は老年学および老年医学分野で最も権威のある学会であるGSA(Gerontological Society of America)の年次大会で発表され、高齢者がより良い生活を送るための重要な示唆を提供している。研究成果は世界的に認められた内容であり、超高齢化社会における生涯学習と身体活動の重要性を科学的に実証した意義は大きいだろう。
研究成果の詳細
項目 | 詳細 |
---|---|
研究対象 | 70歳以上の日本人高齢者878人 |
研究期間 | 12カ月間の縦断調査 |
研究発表 | GSA Annual Scientific Meeting(2024年11月、シアトル) |
研究メンバー | 白石奈津栄(岡山大学)、堀内孝(岡山大学)、中川威(大阪大学)、山本康裕(兵庫教育大学) |
主な発見 | 生涯学習による獲得意識の向上、身体活動による喪失意識の低下 |
加齢に係る変化意識について
加齢に係る変化意識とは、Diehl & Wahl(2010)が提唱した高齢者の加齢に関する意識を測定する指標のことである。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 加齢に伴う獲得と喪失の二側面から構成される評価指標
- 獲得意識は主観的幸福感と正の相関を示す
- 喪失意識は抑うつと正の相関、幸福感と負の相関を示す
白石・堀内・Brothers(2024)によって日本語版の尺度が開発され、多くの研究で活用されている。加齢に係る変化意識の測定により、高齢者の主観的な老いの体験をより科学的に評価することが可能となった。
高齢者の生涯学習と身体活動に関する考察
生涯学習と身体活動が高齢者の加齢意識に与える影響を明らかにしたことは、超高齢化社会における健康施策の方向性を示す重要な発見だ。特に生涯学習が獲得意識を高めることは、高齢者の知的活動を促進する新たな動機付けとなり、認知機能の維持向上にも寄与する可能性が高いだろう。
身体活動による喪失意識の低減効果は、フレイル予防の観点からも注目に値する研究成果である。高齢者の身体活動を促進するためには、個々の身体状況に応じた運動プログラムの開発や、継続的な取り組みを支援する体制の構築が必要となるだろう。
今後は生涯学習と身体活動を組み合わせた総合的なプログラムの開発と効果検証が期待される。研究成果の社会実装に向けては、地域コミュニティや医療機関との連携強化が不可欠であり、より多くの高齢者が参加できる持続可能な仕組みづくりが求められる。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【岡山大学】高齢者には生涯学習と身体活動がお勧め!~主観的な老いの体験に対するポジティブな効果を縦断研究で実証~ | 国立大学法人岡山大学のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002846.000072793.html, (参照 2025-01-15).