PITTANと大阪大学が3次元培養表皮モデルによる老化・炎症メカニズム解明の共同研究を開始、汗による非侵襲的な健康評価手法の確立へ

記事の要約
- PITTANと大阪大学が3次元培養表皮モデルの共同研究を開始
- 汗中の老化関連因子と運動効果の新評価手法を確立へ
- 非侵襲的な健康評価手法の開発を目指す
3次元培養表皮モデルを用いた老化・炎症研究の開始
株式会社PITTANと大阪大学大学院基礎工学研究科は、2025年1月14日に3次元培養表皮モデルを用いた共同研究開発契約を締結した。研究では老化に伴う皮膚組織からの分泌物質の変化を解明し、汗を通じた老化評価手法の確立を目指すことになっている。
PITTANは独自の微量分子分析技術により、従来検出が困難であった汗中の微量成分を高感度で検出することを可能にしており、既にエステサロンやフィットネス事業者向けにサービスを展開している。この技術と大阪大学が有する3次元培養表皮モデルでの研究実績を組み合わせることで、新たな健康評価手法の開発に取り組むことになった。
研究ではJ-TECのEPI-MODELおよびRevivo社のskin on chipという2種類の3次元培養表皮モデルを使用し、老化関連因子であるPAI-1などの分子の発現を制御することで異なる老化段階の皮膚モデルを作製する。さらに温度変化による実験では37度から42度程度まで30分程度温度を上昇させ、ヒートショックタンパク質の活性化による炎症促進状態を再現することになっている。
研究内容のまとめ
老化研究 | 炎症研究 | 運動効果研究 | |
---|---|---|---|
使用モデル | EPI-MODEL | skin on chip | 両モデル |
主な対象因子 | PAI-1 | ヒートショックタンパク質 | マイオカイン |
分析手法 | プロテオーム解析 | 温度変化実験 | 汗中検出 |
PAI-1について
PAI-1とは、プラスミノーゲン活性化抑制因子-1のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- 重要な老化関連因子として知られる分子
- アクチン細胞骨格構造に影響を与える
- 老化を調節する分子メカニズムの一部
大阪大学の研究グループは、ヒト線維芽細胞のアクチン細胞骨格構造に対するプロテオーム網羅解析により、63種類の老化関連遺伝子を同定している。PAI-1を含むこれらの因子が皮膚組織を介して汗中に分泌される仕組みの解明が、本研究の重要な課題となっている。
3次元培養表皮モデル研究に関する考察
PITTANと大阪大学の共同研究は、汗という非侵襲的な生体試料を用いた健康評価手法の確立という点で画期的な取り組みとなっている。特に従来は採血が必要だったマイオカインの測定を汗で代替できる可能性が開かれることで、運動効果の日常的なモニタリングが実現する可能性が高まっている。
ただし、汗中の微量成分分析における技術的な課題は依然として存在しており、検出感度や再現性の向上が重要な課題となっているだろう。また、個人差や環境要因による影響をどのように標準化するかという問題も解決が必要となっている。
今後は、研究成果の実用化に向けて、より多くのサンプルデータの収集と分析が必要不可欠である。特に年齢層や生活習慣の異なる被験者での検証を重ねることで、より信頼性の高い評価手法の確立につながることが期待される。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「株式会社PITTAN、大阪大学大学院基礎工学研究科と老化・炎症メカニズム解明のための3次元培養表皮モデルを用いた共同研究を開始 | 株式会社PITTANのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000118398.html, (参照 2025-01-15).