記事の要約
- 八王子市立学校で教員103名が音のない世界を体験する研修を実施
- 聴覚障害者が案内役となり多様性と相互理解を深めるプログラムを展開
- 教員からインクルーシブ教育の充実につながる好評価を獲得
教員向けダイアログ・イン・サイレンス研修プログラムの実施
一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティは、インクルーシブ教育の充実に向けた取り組みとして、2024年10月に八王子市立の小中学校および義務教育学校の教員103名を対象とした「ダイアログ・イン・サイレンス」を実施した。本プログラムでは聴覚障害のあるスタッフが案内役を務め、音のない環境で参加者がヘッドセットを装着しながらジェスチャーや表情を活用したコミュニケーションを体験している。
体験後に実施されたアンケートでは、日本語習得が十分でない児童への指導改善や場面緘黙の生徒とのコミュニケーション方法の開発など、具体的な教育現場での活用事例が報告された。教員間の対話も活性化し、多様性を認める学級づくりにつながったという評価も寄せられている。
また本プログラムは1998年にドイツで開始されて以降、フランス、イスラエル、メキシコ、トルコ、中国など世界各国で展開されており、これまでに100万人以上が体験している。日本では2017年の東京初開催以降、すでに2万人以上が体験を重ねており、教育現場での活用が期待されている。
ダイアログ・イン・サイレンス実施概要
項目 | 詳細 |
---|---|
実施日 | 2024年10月15日、17日、24日 |
実施場所 | 八王子市立いずみの森義務教育学校、柏木小学校、東浅川小学校 |
参加者 | 市立小・中・義務教育学校の教員 計103名 |
実施目的 | 時代の変化に対応できる教師の資質能力向上 |
プログラム特徴 | 聴覚障害者による案内、音のない環境での対話体験 |
インクルーシブ教育について
インクルーシブ教育とは、障害の有無や言語・文化的背景の違いに関わらず、すべての児童生徒が共に学ぶ教育システムのことを指す。主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- 多様な特性を持つ児童生徒の相互理解と尊重の促進
- 個々の教育ニーズに応じた柔軟な支援体制の構築
- 教育環境のバリアフリー化と合理的配慮の提供
教育現場におけるインクルーシブ教育の実践では、教員の理解と指導力の向上が重要な課題となっている。ダイアログ・イン・サイレンスのような体験型研修は、教員が多様性への理解を深め、効果的な指導方法を習得するための有効な手段として注目を集めている。
教員研修におけるダイアログ・イン・サイレンスに関する考察
教員がダイアログ・イン・サイレンスを体験することで、聴覚障害者の視点や多様なコミュニケーション方法について深い理解を得られることは、インクルーシブ教育の実践において重要な意味を持つ。特に非言語コミュニケーションの重要性を実感できる点は、様々な特性を持つ児童生徒への指導に活かせる貴重な学びとなるだろう。
今後の課題として、このような体験型研修をより多くの教育機関に展開していくための体制整備や、研修効果の長期的な検証が必要となってくる。また、教員間で得られた気づきや指導方法を共有するためのフォローアップ体制の構築も重要な検討課題となるだろう。
将来的には、教員研修にとどまらず、児童生徒自身がこのような体験を通じて多様性への理解を深める機会を設けることも検討に値する。体験を通じた学びは、インクルーシブな学校文化の醸成に大きく貢献する可能性を秘めている。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「インクルーシブな教育の充実に向け、八王子市立小・中・義務教育学校の教員を対象に「ダイアログ・イン・サイレンス」を実施 | 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000088726.html, (参照 2025-01-10).