記事の要約
- 近畿大学発のAIビーフ技術で肉用牛の個体差を可視化
- ビーフソムリエ社が枝肉形質予測診断サービスを開始
- Abelia Capitalからシードラウンドの資金調達を実施
AIビーフ技術による次世代畜産業の実現へ向けた取り組み
近畿大学生物理工学部遺伝子工学科の松本和也教授は、肉用牛の将来の肉質等を採血検査によって可視化できるAIビーフ技術を2022年に世界で初めて開発した。この技術を用いた枝肉形質予測診断サービスを提供する株式会社ビーフソムリエが2024年12月に設立され、松岡俊樹氏が代表取締役社長に就任している。
AIビーフ技術は肥育中の牛から採取した血液中の135種類のタンパク質情報をAIで分析することで、出荷時期のサシの状態や枝肉の重量、オレイン酸の含有量などを予測することが可能だ。この技術により肥育途中での肉質改善や飼料コストの削減が実現でき、牧場の経営安定化に貢献するだろう。
株式会社ビーフソムリエは国立研究開発法人科学技術振興機構のSTARTプロジェクト推進型起業実証支援を経て、Abelia Capitalからシードラウンドにおける資金調達を実施した。元インキュベイトファンド株式会社の仁木隆大氏が代表パートナーを務めるAbelia Capitalからの支援を受け、事業展開を加速させている。
AIビーフ技術の詳細
項目 | 詳細 |
---|---|
開発機関 | 近畿大学生物理工学部 |
開発時期 | 2022年 |
主な機能 | 肉用牛の枝肉形質の生体予測診断 |
分析対象 | 血液中の135種類のタンパク質情報 |
予測項目 | サシの状態、枝肉重量、オレイン酸含有量 |
サシについて
サシとは、牛肉の赤身肉の間に白い脂肪が網の目のように入っている状態のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- 牛肉の品質を決定する重要な要素
- 脂肪交雑とも呼ばれる品質指標
- 食味や口溶けに影響を与える要因
AIビーフ技術では、出荷の1年以上前からサシの入り具合を予測することが可能となっている。この予測技術により、肥育方法の最適化や飼料コストの削減が実現でき、より効率的な牛肉生産が可能となるのだ。
AIビーフ技術に関する考察
AIビーフ技術の導入により、従来のブラックボックスだった肉用牛の肥育過程を科学的に可視化できることは、畜産業界にとって革新的な進歩である。特に日本の畜産業界では飼料の海外依存度が高く、物価高や円安の影響を受けやすい環境下において、効率的な肥育管理は経営の安定化に大きく貢献するだろう。
一方で、AIによる予測の精度向上や、個体差による予測誤差の補正など、技術面での課題も存在する可能性がある。また、予測結果に基づく肥育方法の最適化には、現場の経験と科学的データの両立が必要不可欠だ。
今後は、AIビーフ技術を活用した新たな品質管理基準の確立や、ブランド牛の差別化戦略への応用が期待される。さらに、この技術が畜産業界全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、持続可能な畜産業の実現に貢献するだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「近畿大学発ディープテックスタートアップ※1が次世代の畜産業創出に挑戦 | 株式会社ビーフソムリエのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000154461.html, (参照 2025-01-11).