新潟医療福祉大学が農業従事者の院外心停止に関する全国調査を実施、救急医療体制の課題が明らかに

新潟医療福祉大学が農業従事者の院外心停止に関する全国調査を実施、救急医療体制の課題が明らかに

PR TIMES より

記事の要約

  • 新潟医療福祉大学が農業従事者の院外心停止に関する研究を発表
  • 農地での心肺停止は早期発見・通報が困難で生存率が極めて低い
  • 農業従事者の命を守る対策構築の重要性を論文で提唱

新潟医療福祉大学による農業従事者の院外心停止に関する研究報告

新潟医療福祉大学の田中耕一講師らによる研究グループは、農業従事者の命を守るための研究成果を2024年12月15日にJournal of Public Healthで発表した。この研究では日本の農地で発生した院外心停止症例を事務所以外の仕事場で発生した症例と比較し、農業従事者の命を守る対策の必要性を明らかにしている。

2016年から2021年までの6年間に全国の救急隊が搬送した13,469件のデータベースを解析した結果、農地における院外心停止症例は目撃が少なく、除細動の適応症例も少ないことが判明した。さらに救急隊の傷病者接触までの時間も大幅に遅延しており、神経学的に良好な1か月生存率も極端に低いことが明らかになっている。

この研究は公益財団法人古泉財団研究費助成金による支援を受けて実施され、新潟医療福祉大学医療技術学部救急救命学科の田中耕一講師を筆頭に、社会福祉学科の原口彩子教授、金沢医科大学と金沢大学の稲葉英夫教授らが共同で取り組んだ。農業従事者の安全確保に向けた重要な知見を提供する研究となった。

農地における院外心停止の特徴まとめ

項目 詳細
研究期間 2016-2021年(6年間)
分析データ数 13,469件
主な特徴 高齢傷病者が多い、心肺停止の目撃が少ない、除細動適応症例が少ない
救急対応 AED使用率低下、心肺蘇生法実施率低下、救急隊接触時間の遅延
生存率 神経学的に良好な1か月生存率が極端に低い

新潟医療福祉大学

院外心停止について

院外心停止(OHCA: Out of Hospital Cardiac Arrest)とは、病院外で発生する心臓の機能が突然停止する状態のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。

  • 成人の主要な死因の一つとして位置づけられている
  • 早期発見・通報・応急手当・救命処置が生存率向上の鍵となる
  • 発生場所や環境によって救命率に大きな差が生じる

農地における院外心停止の特徴として、目撃者が少ないことや救急隊の到着が遅延しやすい環境要因が挙げられる。このため心肺蘇生法の実施率が低く、AEDの使用機会も限られており、農業従事者の命を守るためには環境に応じた特別な対策が必要となっている。

農地における院外心停止研究に関する考察

農地における院外心停止の研究が全国規模で実施されたことは、農業従事者の安全確保において画期的な一歩となった。この研究によって明らかになった農地特有の課題は、早期発見システムの構築や救急医療アクセスの改善など、具体的な対策の立案に直結する重要な知見となっている。

今後は研究で明らかになった課題に対し、GPS機能を活用した位置情報の共有システムや、ドローンによるAED配送など、新技術を活用した解決策の検討が必要となるだろう。さらに農業従事者向けの救命講習の実施や、地域に根ざした救急医療体制の整備など、包括的な対策の構築も求められる。

農業は国民生活に不可欠な産業であり、従事者の安全確保は持続可能な農業の実現に向けた重要課題である。本研究を起点として、農業従事者の命を守るための具体的な施策が展開されることが期待される。

参考サイト/関連サイト

  1. PR TIMES.「【新潟医療福祉大学】農業従事者の命を守る!持続可能な農業社会の未来を開く研究成果を発表 | 株式会社NSGホールディングスのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001599.000032951.html, (参照 2025-01-10).