記事の要約
- 信州大学と東洋ライスが米糠摂取に関する共同研究を実施
- 米糠層と亜糊粉層摂取で異なる腸内細菌が増加
- 亜糊粉層摂取群で腸内細菌叢の多様性が向上
信州大学と東洋ライスの米糠研究による腸内環境改善効果の解明
信州大学農学部食品免疫機能学研究室の田中沙智准教授らの研究グループと東洋ライス株式会社は、2025年1月8日に玄米粒の各画分摂取による腸内細菌への影響を解明する共同研究の結果を発表した。玄米粒を糠層、亜糊粉層、デンプン層の3画分に分画し、マウスへの各画分摂取による腸内環境への影響を明らかにすることに成功している。
研究では糠層摂取群でBacillus licheniformisが、亜糊粉層摂取群ではLactobacillus gasseriが顕著に増加することが判明した。特に亜糊粉層摂取群では、腸内細菌叢の多様性を示す指標であるOTU、ACE、Chao1がコントロール群と比較して増加傾向を示し、糠層摂取群と比較しても高い値を記録している。
この研究成果は2024年12月2日・3日に開催された日本食品免疫学会設立20周年記念学術大会において「米糠画分を摂取させたマウスの腸内細菌叢解析」という演題で発表された。研究結果により、玄米の栄養を残しつつ白米と同じ食味を実現する米の開発や、消費者の健康増進に新たな可能性が見出されている。
米糠研究の実験結果まとめ
糠層摂取群 | 亜糊粉層摂取群 | 胚乳摂取群 | |
---|---|---|---|
増加した腸内細菌 | Bacillus licheniformis | Lactobacillus gasseri | 特記事項なし |
細菌叢の多様性 | 標準的 | 高値 | 特記事項なし |
科レベルの特徴 | Bacillaceaeの割合増加 | Lactobacillaceaeの割合増加 | 特記事項なし |
腸内細菌叢について
腸内細菌叢とは、腸内に生息する多様な微生物群集のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。
- 腸管バリア機能の向上に寄与する重要な役割を果たす
- 免疫応答の調節に関与し健康維持に貢献
- 多様な代謝産物を生成し生活習慣病予防に効果
研究結果から、米糠画分の摂取により腸内細菌叢の多様性が高まることで、より多くの有用な代謝産物が生成される可能性が示唆された。特に亜糊粉層摂取群では、プロバイオティクスとして知られるガセリ菌が増加し、腸内環境の改善に有効であることが確認されている。
米糠画分摂取研究に関する考察
米糠画分の摂取による腸内細菌叢への影響を明らかにした本研究は、日本人の主食である米の新たな可能性を示唆する重要な成果である。特に亜糊粉層の摂取によって腸内細菌叢の多様性が高まることは、消費者の健康増進に向けた具体的な方向性を示すものだ。
今後は長期的な摂取による影響や、年齢層による効果の違いなど、より詳細な研究が必要となるだろう。また、米糠画分の摂取量や摂取期間の最適化、他の食品との相互作用についても検証が求められる。
この研究成果を活かし、玄米の栄養価を保持しながら白米のような食味を実現する新たな米製品の開発が進むことが期待される。さらに、腸内環境改善を通じた生活習慣病予防など、医食同源の観点からも注目すべき研究分野となっていくだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「【共同研究】信州大学×東洋ライス 米糠摂取により腸内の有用菌の増加や腸内細菌の多様性が高まることについて、動物実験で証明 | 東洋ライス株式会社のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000046647.html, (参照 2025-01-10).